大分に住んでいると「とり天」は空気みたいな存在です。食堂に行けばある。喫茶店にもある。お弁当にも入っている。
でも県外の友人に「とり天って何?から揚げと何が違うの?」と聞かれて、うまく答えられませんでした。
「えっと…衣が違うんだけど…」
ちゃんと説明できなかったので、改めて調べてみました。
そもそも「とり天」って何?
一言でいうと、下味をつけた鶏肉に天ぷら衣をつけて揚げ、酢醤油や練りからしで食べる料理です。
ポイントは3つ。
① 下味がついている 醤油、にんにく、ごま油などで鶏肉に下味をつけてから揚げます。天ぷらには普通、下味をつけません。
② 衣が天ぷら系 溶き卵と小麦粉で作った天ぷら衣をつけます。から揚げは片栗粉などの粉をまぶすだけなので、衣の性質がまったく違います。
③ 食べ方が独特 天つゆではなく、練りからしをそえた酢醤油で食べるのが一般的。ポン酢やかぼすを使うことも多い。 Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries
この「からし+酢醤油」という組み合わせが、とり天らしさのひとつだと思います。
から揚げとの違いを整理すると
| とり天 | から揚げ(中津式) | |
|---|---|---|
| 下味 | あり(醤油・にんにくなど) | あり(醤油・にんにく・しょうが) |
| 衣 | 天ぷら衣(溶き卵+小麦粉) | 片栗粉・小麦粉をまぶす |
| 肉の切り方 | 削ぎ切り(薄め) | ぶつ切り(厚め) |
| 皮 | なし | あり |
| 食べ方 | 酢醤油+練りからし | そのまま |
| 仕上がり | サクサク・ふんわり | カリッ・ジューシー |
からあげは肉に下味をつけ片栗粉をつけて揚げますが、とり天は天ぷら衣をつけて揚げ、食べるときポン酢などのつけだれを使う Nisshin Oillioというのが基本的な違いです。
とり天が生まれた理由がおもしろい
とり天の発祥については諸説あるのですが、一番有名な説がおもしろい。
昭和初期、既存メニューの唐揚げが骨付きであったために女性が食べづらいだろうという気遣いから、骨のないもも肉を食べやすい大きさに切り、天ぷら風にアレンジしたのがはじまり。 Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries
「女性が食べやすいように」という気遣いから生まれた料理だったとは。なんかいいですね。
発祥の店については、別府市の「東洋軒」と大分市の「キッチンいこい」の2説があり、いまだに決着はついておりません。別府市観光協会と大分市観光協会の両者は、どちらも譲らず、元祖とり天をめぐって熱いバトルを繰り広げている状況 Gotouchi-iが続いているそうです。
この「元祖争い」のおかげで、とり天が全国的に有名になったともいえるかもしれません。
大分県民はとり天を「全国区」だと思っている
ここが一番おもしろいと思ったのですが、大分県民にとってあまりにも一般的な料理であるため、日本全国どこにでもある料理だと思っている県民も多い。 Wikipedia
私もそうでした。大分を出るまで、とり天はどこでも食べられるものだと思っていました。
仕事や観光で県外に出かけた大分県人が、大分以外にとり天がないのを知ってガク然としたという話はよく聞きます。 Natsumaya
あるあるすぎます。
とり天は「かさまし」の知恵から生まれた
もうひとつ、庶民的な理由も知りました。
鶏肉が高価な食材だった時代、家庭では衣がたっぷりついた「とり天」がつくられていた。厚い衣がかさ増しになり、家族が多くてもみんなで鶏肉を味わうことができる。 Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries
肉が少なくても衣でボリュームを出す。節約の知恵から生まれた料理でもあったんです。
今でもとり天の衣は厚めのものが多いですが、そういう背景があったとは知りませんでした。
大分在住のあかりが思うこと
調べてみて、あらためて「とり天ってちゃんとした料理なんだな」と思いました。
食べやすさへの気遣い、かさましの知恵、元祖争いで有名になった歴史。当たり前すぎて気にしていなかったものに、ちゃんと背景がある。
大分の食べものって、掘り下げていくといろいろ出てきておもしろいです。
まとめ
とり天とから揚げの一番の違い
- とり天:天ぷら衣(ふんわりサクサク)+酢醤油・からしで食べる
- から揚げ:片栗粉をまぶす(カリッとジューシー)+そのまま食べる
とり天の豆知識
- 発祥は昭和初期、「女性が食べやすいように」という気遣いから
- 別府市・大分市で発祥地をめぐる元祖争いが現在も続行中
- 大分県民の多くが「全国どこでも食べられる」と思っている
- 鶏肉が高価だった時代の「かさまし」の知恵から衣が厚くなった